2021年の消費コンテンツ

2021年に見たり聞いたりしたコンテンツについて、コメントを付けながら紹介していきます。思い出したときに書いているので、コンテンツごとのテンションが一定ではないです。

台無しになるネタバレは避けていますが、軽いネタバレは許容範囲としてコメントを書いているので、ネタバレを気にする人は注意してください。

ドラマ

今ここにある危機とぼくの好感度について

ことなかれ主義で中身のないことしか言わない元アナウンサーの主人公が大学の広報事務に転職して、大学のいろいろな事件に巻き込まれていく話です。主人公が成長する姿以上に、第3話の大学総長が決断するシーンはかなり来るものがあります。現実としてこのようなストーリーになることはほぼないのだろうと諦めも感じてしまいますが、それでも希望を描くことの重要性を感じます。総長役の松重豊さん、『孤独のグルメ』などのせいかちょっと頼りないおじさん役のイメージが強かったのですが、今作ではこれ以上なくかっこいい大人の役でした。

引きこもり先生

元引きこもりの焼き鳥屋店主が公立中学の非常勤講師として、不登校生徒の支援学級を受け持つことになり、各生徒の事情や学校の保身などに振り回されながらも不登校生徒を守ろうとする作品です。誰かがスパッと解決できるような話ではなく、むしろ傷ついた人たちをどうケアしあうかという泥臭いストーリーです。いじめや家庭環境のどうしようもならなさと「学校なんか来なくてもいいんだ」という言葉の重みが苦しいです。

天国と地獄 〜サイコな2人〜

階段で転げ落ちた男女が入れ替わるベッタベタの『転校生』展開に、刑事と殺人者の属性を付け加えることで、協力とも反抗とも取れないサスペンスに持ち込んでいるのが上手い作品だと思いました。その結果、単なる事件の謎の解決や入れ替わりの解消だけではなく、入れ替わった"自分"が起こした事件で自分が逮捕されないために偽装工作するなど、1つメタな話に仕上がっていて完成度が高いです。

ソロ活女子のススメ

江口のりこさん演じる五月女恵が、焼肉からサウナまでソロ活を満喫する話です。江口さんが楽しそうなので笑顔になれます。

ゲキカラドウ

飲料メーカーの営業促進室の人たちが、困難にぶち当たっては激辛料理を食べにいって天啓を得て解決する、という『孤独のグルメ』的なアホ作品です。激辛で頭やられている感じの謎理論が出てきて地味に面白いです。

ゆるキャン2(実写版)

実写かぁと思っていたのですが、1周回って実写キャンプいいな〜という気持ちになりました。

ソーイング・ビー

洋裁の課題を制限時間のなかで作るというイギリスの番組です。服作って評価受けて誰か脱落してを繰り返すだけなのですが、謎の面白さがあります。でも司会者が変わったら面白さがわからなくなって見なくなってしまいました。

アンナチュラル / MIU404

『アンナチュラル』は司法解剖に代表される遺体を解剖して死因を特定する法医解剖を、『MIU404』では初動捜査を専門に行う機動捜査隊を題材にしており、どちらも答えの出ない倫理的な問題から現代らしい社会問題を織り交ぜつつ、個別事件の謎だけでなく登場人物の過去も明らかにしていく話です。TBSの野木亜紀子オリジナルの2作品で、知り合いにオススメされてPrime Videoで見たのですが、めちゃくちゃ出来が良くてほぼ一気見しました。全体と各話のバランス感覚が抜群で、連続ドラマとして全体を貫き通す1本筋があり伏線として各話に散りばめられている一方で、1話ごとの個別事件の掘り下げが映画のような重みすらあります。『アンナチュラル』では4話が、『MIU404』では8話が1番やりきれなかったです。

映画

シン・エヴァンゲリオン

庵野くんがもうエヴァに乗らなくて済むようになってよかった。きちんと終わらせてくれているので大変満足なのですが、とはいえ結局のところ立ち直るには母親をはじめとして気に掛けてくれる周囲の人が必要であるという結論で、それをある種のエヴァの解答とするのはちょっと救いがなさすぎるというか、もっと早くに描けなかったのかとは思います。時間が経って思春期的な葛藤に興味を失ってしまったという感想がありました*1が、確かに旧エヴァが提示してきた実存的な問いに対する真っ正面からの解答はできないというのが結論なのかもしれません。

映画大好きポンポさん

「幸福は創造の敵」というキャッチコピーの通り、根暗映画オタクのアシスタントのジーンが監督に抜擢され、伝説俳優の復帰作を撮るというお話です。編集という地味な作業を人生の取捨選択と絡めて描いていてクリエイターを感じますが、自分にはあまり響かなかったというのが正直なところです。またプロデューサーのポンポさんの思想として90分に収めるというのがあるのですが、映画館で見るものだからこそ時間を忘れて見られるので時間に細かく縛られる必要はないし、むしろ本筋から外れた小ネタの部分が作品の価値になると思うので、あまりよい思想ではないなあと思いました。

劇場版 レヴュースタァライト

『レヴュースタァライト』の完結編となる映画です。文句なしに今年の最優秀賞です。テレビアニメ版『レヴュースタァライト』とその総集編(という名のリメイク)の『ロンドロンドロンド』で描かれたのは、戯曲『スタァライト』をめぐる9人のそれぞれ異なる執着でしたが、『劇場版』で描かれるのはその後に残ったお互いへの執着の話だと言えます。熱量だけでお釣りが来る上に、どこまで考察しても想定されていそうな底知れなさを感じます。テレビアニメをリアルタイムで見ていたときはあまりハマらず単なる感情の重たいアニメだと思っていて、劇場版もOVA的なものだと思っていたのですが、すべてをひっくり返してポジションゼロする力強い映画でした。

少し感じたことを書いておくと、大場ななの大人っぽさと子供っぽさの乖離が気になっていて、再演を繰り返すうちに成長したお母さん的な大場ななと初舞台に囚われて成長できていない子供のままの大場なながいるのだと思っています。皆殺しのレヴューは、この"母の大場なな"が"子供の大場なな"(と6人)に向けて行われたように思えます。このレヴューにだけ「高いところ(=塔)から落ちる」という戯曲『スタァライト』のモチーフがなく、塔に登れなかった7人が再び塔に登る(=スタァになる)ためのレヴューであり、再演のなかで、自分を含め/ひかりを除いた8人を何度も見てきた母の大場ななだからこそ、背中を押してやることができたのだと思います。皆殺しのレビューが母の大場ななが皆の背中を押すことで執着を終える一方で、狩りのレヴューは子供の大場ななが過去の弱くても諦めない星見純那への執着をより眩しい星見純那で断ち切り、大場ななは2つの執着を手放せたのだと思いました。

竜とそばかすの姫

田舎の冴えない少女が仮想空間Uで誰もが知る歌姫になって竜と出会う、『美女と野獣』と『サマーウォーズ』の現代版といえるストーリーです。というと面白そうなのですが、正直脚本は最悪の出来だと思いました。基本的に仮想空間内で話が進む中盤まではよいのですが、終盤のツッコミどころの多さとオチの何も片付いてないとっ散らかり度合いがすごく、正直序盤の見せ場のMillenium Paradeの『U』をYouTubeで見るので十分だと思いました。

細田守の、国家を諦めている感じなんなんでしょうか…かといって新海誠的な方向でもなく、どデカいことを身内間のレベルでやって特に誰かがハッピーになるわけでもないしカタルシスもないという、中途半端な着地の仕方をしているように思いました。特に今回は仮想空間を結局生身の身体性に劣るもの、として描きながらそこで勇気を与えるというよくわからない状況になっているような気がします。仮想空間があそこまで広がったときに、生身とアバターにそこまでの違いを見いだせるものなのでしょうか?インターネットは結局生身の従属でしかないと私も思っているものの、細田守の世界はちょっと受け付けがたいものがあります。

マスカレード・ナイト

キムタクが好きか『マスカレード・ホテル』が好きなら見た方がよい作品です。前作と全くそのままのテンションで作られていて感動しました。

きんいろモザイク Thank You

きんいろモザイク』の完結編となる映画です。つらい時期を支えてもらったので変に思い入れがあります。きんいろモザイクありがとう。エンドロール後にスタッフが感極まった結果なのか走馬灯みたいなシーンが流れて笑ってしまいました。

きのう何食べた?

よしながふみさん原作の、同棲しているゲイの2人を中心として、2人の親や友人たちとの関係を描くグルメ漫画のドラマ映画化です。ゲイ特有の問題と、老いや周囲との向き合い方などの一般的な問題がうまく描かれている作品だと思います。いわゆるストレートな人でもそれぞれ違う考え方をしていて人間が一枚岩ではないことを思い出させてくれます。全体的にしっとりしていて暗い雰囲気になりそうなものですが、佳代子さんの底抜けな明るさが作品に希望を与えています。

アイの歌声を聴かせて

高校で実地試験をすることになった"ポンコツ"天真爛漫なAIロボットが、周囲の人間を巻き込みながら無邪気に学校で歌を歌ったりお悩みを解決していく話です。どこかズレたAIとミュージカルが噛み合っていて上手い組み合わせになっており、夏休み映画テイストのかなりよくできたAIものでおすすめです。吉浦監督が『イブの時間』で描いていたAIと人間の関係の正統なアップデートになっていて、AIが自然に存在する社会で、人と同様に"それら"と仲良くなることができるのかというテーマの『イブの時間』と、"それら"と仲がいいことを前提にどう関係していくのかをテーマにした『アイ歌』の対比ができそうです。

後述のATRIも似たテーマですが、最近のAIものとして「ポンコツ」が肯定的な意味でロボットの特性として描かれるようになったと感じます。現実でのSiriやルンバのポンコツ対応の経験が背景にあるのは当然として、さやわかさんの残念論のような否定的な属性を肯定的に見る風潮を見て取れそうです。とはいえ、その風潮は既に対象に好意を抱いていることが前提にありそうなので、人間がAIに対して敵意よりも好意を持ち始めていることの現れなのかもしれないなと思いました。

アニメ

Pui Pui モルカー

ぷいぷい。しばらく驚いたときの顔マネがモルカーになりました。

ゆるキャン SEASON 2

冬キャンプをやる日常系作品です。アニメ2期では1期よりも、なでしことお姉ちゃん、リンと両親・祖父、山中湖のキャンパーさんと、家族などの周囲の人が描かれていて、多くの人に心配され見守られ助け合いながらキャンプをしている様子が描かれているように思いました。インドアな自分も春の陽気に誘われて急に最低限ギアを揃えてデイキャンに行ったりしたのですが、その流れで父がバーベキューに積極的になるなど、周囲の変化も感じることができました。

ワンダーエッグ・プライオリティ

不登校など居場所のない思春期の少女が、戦いの中で同じくトラウマを持った少女たちを救う話です。要素要素は面白いのですがちゃんと回収されないまま終わってしまい、結局何が言いたかったのかわからないことになっています。結論としては選択(=プライオリティ)を尊重するということで、カタルシスがないことも現実的な解を意味しているのだと思うのですが、風呂敷を広げすぎたような気がしてしまいます。

白い砂のアクアトープ

夢を諦めた元アイドルが傷心のまま沖縄に旅をして、水族館の館長代理の高校生と出会って水族館で働き始める、P.A.WORKSのお仕事シリーズです。夢破れた風花が水族館で立ち直る第1クールと、くくるが仕事で抑うつになりそこから立ち直る第2クールが対応しているはずなのにどうも上手く対応していないのと、かなり伏線っぽいのに特に関係ない要素が多いなど、とっ散らかった印象を受けました。それが人生でしょと言われたらそうなんですが…

マンガ

ブルーピリオド

高校で絵を描くことに触れて東京藝大の入試を受ける受験マンガでありながら、その後藝大で描くことを見つめ直す創作の苦しみを描くマンガです。アニメ化もしていますが、マンガの方がエグさが強くておすすめです。

受験編では受験生だったころの苦しみが、大学生編では答えのなさに悩んだ経験が思い起こされるのですが、特に11巻ではお絵描き教室が舞台で昔の嫌な思い出を抉られてかなりしんどかったです。そんな的確に"美術を苦手になった理由"を突かないでいただきたいです。ほんとに。棒人間のエピソードといい、11巻は自分の幼少期のエピソードを引きずり出される感覚がありました。

死ぬときはまばゆく

心の触られたくない場所を的確に刺してくるタイプの作品でした。容姿が原因でいじめにあっていた主人公の美麗が、整形とダイエットをして可愛くなり、地元から離れて大学生活をスタートさせるというお話です。特に第1-2巻で中心的に描かれる、「やっと今普通になれたんだ」という言葉に象徴される美麗の"生まれ変わり"と、その一方で過去に苦しめられる姿が、自分に重なる部分もあり読んでいてかなりしんどくなります。

ここは今から倫理です。

高校の倫理の先生が、生徒たちが抱える問題と向き合いながら「よく生きる」とはなにか考える話です。先生を通して具体的な倫理の実践がうまく描かれていて、倫理や哲学に触れたい人におすすめできる作品です。哲学倫理は普遍的なものを扱っているように見えて実は矛盾だらけで、実践の場では時と場合によるとしか言えないしあらゆる意味での最良を選ぶのは不可能なので、局所的な「最良」をどこに見出すかというのが倫理の実践なのでしょうね。

雪の下のクオリア

植物好きで人付き合いが苦手な先輩と性に奔放な後輩が、少しずつ雪解けのように触れ合っていく話です。BLではありますが、むしろ先輩の好意は言葉ではなかなか表現されないぐらい直接的な表現はなく、ものすごく空気感がきれいな作品です。「人の事はひとりでいちゃわかんないよ / もし許したいって思えるなら誰かと一緒にいなさいね…」というセリフが沁みます。次はエトランゼシリーズを読もうと思います。

ぜんぶきみの性

ときめくと性別が替わる性転換症候群の先輩後輩の2人が恋愛をするTSものです。2人のぎこちない恋愛も微笑ましいのですが、2人だけでなく周囲の人も自分の理想と現実の間で悩んでおり、どう折り合いを付けるかというのもテーマになっています。といっても深刻にはならず、先輩のズレた恋愛観やTSもののお約束展開など、全体的に楽観的なギャグテイストになっていて楽しい作品です。

〈責任〉の生成

『中動態の世界』の国分功一郎さんと『発達障害当事者研究』の熊谷晋一郎さんの対談本です。国分さんの政治思想は合わないのですが、哲学思想はかなり好みでよく読んでいます。かなり忘れているので読み返さないといけないのですが、発達障害のなかに中動態の概念を見出しながらASDを読み解き、依存症治療のなかでの中動態的な責任の扱われ方を考察しています。ASDは感覚をそのまま受け取っておりまとめ上げるのに時間がかかること、マイノリティは自分のコナトゥスに気づきづらくマジョリティの規範を取り入れてしまうこと、現代のポストフォーディズムが反中動態なために発達障害がネガとして注目されてしまっていることが印象に残っています。

愛するということ

急にAmazonにおすすめされて、愛を知れと言われているように感じたので読みました。短い第1章で語られる「愛は技術である」というフレーズが象徴的で、技術であるからこそ理論に精通し習得に励み究極の関心事にしなくてはならないという主張です。一般の恋愛論とも後述の恋愛理論とも違った、ユダヤキリスト教的な積極的な愛を説いており、自分は第3章の現代西洋社会における歪んだ愛を批判する章が一番面白いと思いました。一般の技術の習得に対する心得についても力強く解説していて反省しながら読みました。

現代思想2021年9月号 〈恋愛〉の現在

いくつかの論考をつまみ食い的に読みました。

『ポリアモリーという性愛と文化』では、ポリアモリーを「自由の実践」として捉え、その関係構築におけるジェンダー平等性やジェラシーへの対処、相手への信頼による率直さなどについて語られています。自分はある程度の不倫行為でも正直に言ってもらえるなら許せるので軽いポリアモリーであると言えそうなのですが、やはり嫉妬の気持ちはあるので参考になるなあと思いながら読みました。

『クワロマンティック宣言』では、世間一般の「恋愛」にとらわれず「重要な他者」とかけがえのない関係性を作るクワロマンティックについて、具体的な実践として重要な他者と固有の文脈を作って関係を築き、第三者から関係を認めてもらい、その関係性に名前を付けて積極的に惚気ることが大事と述べています。自分はこの論考を友人関係の継続に多かれ少なかれ必要なことなんじゃないかと思いながら読みました。どちらかといえば友人は少ない方の人間だと思うのですが、長年交流のある友人とはTwitterの非公開アカウントでリプを送りあったりしており、それを見た別の友人から仲いいよねと言われることがあります。関係性を自分から能動的に作るという行為が必要ということから、最後にフロムが引用されているのも納得ができます。

小説

かがみの孤城

学校でいじめられ不登校になってしまった主人公の部屋の鏡が、ある日急にお城への入り口になって、そこで自分と同じ境遇の子どもたちと鍵探しをすることになり、始めはぎこちなく交流していた7人が励ましたりいざこざを起こしたりしながら友情を深めるも、ある時不可解なことが起こって…?というお話です。出だしはファンタジーですが、全体的には子どもたちのトラウマや謎解きがメインです。辻村さんの小説は初めて読んだのですが、序盤のぎこちなさと中盤のやるせなさから、終盤の畳み掛けるような展開のなかに、どこか優しさのある眼差しが感じられる作品でした。文庫化されたら読もうと思っていたのですが、なかなか出ないのでハードカバーを買ったら1ヶ月後に文庫化されました。どうして。

女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話

なにか小説読みたいなと思ってAmazon Prime Readingで1巻無料だったので読んだら、結構しっかりちゃんとやることやっていて笑いながら続きを買いました。生意気な誘い受けだいすきです。

音楽

電音部

バンダイナムコの音楽原作キャラクタープロジェクトでストーリーもあるらしいのですが、音楽しか聞いていないのでよくわかっていません。DJがテーマになっているのでクラブミュージックが中心ですが、コンポーザーがかなり手堅く名曲揃いなのでかなりおすすめです。『Catch a Fire』『Beat Me!』はノリやすく、『Inverted Pyramid』『Distortion』はアングラに、『トアルトワ』『Love Me Harder』『twilight』は落ち着いておしゃれで、『Do You Even DJ?』『Chick Chick Love』はキャラクターっぽさが出ながらゴツいサウンドで…と、様々な種類の曲があります。どれもクラブで聞きたくなるタイプの曲です。

Marpril

岩本町芸能社のVtuberですが、音楽にも力を入れていて毎回ゴツい曲を出してくれます。去年のLADY’S ONLYさんの『Throwback』がド好みでしたが、今年はkamome sanoさんのころころ曲調が変わるおしゃれサウンド『キミエモーション』でサビありドロップあり2人のラップありの全部盛りでやってくれました。PVの最後の横断歩道すきです。毎回リミキサーもツボを抑えているのですがその手の筋の人がバックにいるんでしょうか。

Porter Robinson『Nurture』

Porter Robinsonは『Shelter』『Sad Machine』が代表曲で、Virtual Selfの名義もある世界的なDJトラックメイカーです。先行公開されていた『Get Your Wish』がめちゃくちゃ好きです。第1サビの押さえつけられたようなメロディから一転して羽ばたくような伸び伸びとしたメロディに変わるのが心地よいです。また日本でオタクDJしてくれる日を待っています。

月ノ美兎『月の兎はヴァーチュアルの夢を見る』

Vtuber月ノ美兎のアルバムですが、月ノ美兎らしく挑戦的なことをしているなあと思いました。月ノ美兎サブカル批評的なことを演者の立場でやってくれるので楽しいです。

表題曲で1曲目の『月の兎はヴァーチュアルの夢を見る』で現代音楽のような構成を入れてくるあたり"月ノ美兎"をやるぞという宣言に感じます。『それゆけ!学級委員長』では平成初期のアニメOPをパロディしたキャッチーな曲ですが、『ウラノミト』ではアイドル感を匂わせながら、月ノ美兎の多面性と捉えられなさを歌詞・曲展開の両方でうまく表現しながら、現在の月ノ美兎への視線を一笑しそこに留まらない変化を予感させているように聞こえます。『光る地図』ではさらに一転してVtuberの楽曲とは思えない変則的な曲で、歌詞ではメディアを介した月ノ美兎はみんなと双方向に話ができるしどこにでも存在できる、という自分自身への批評のように読むこともできるのではないでしょうか。『浮遊感UFO』はレトロ感が心地よい曲ですが、歌詞もふわふわして掴みどころがなくて正直どう解釈したらいいのかわかっていません…リアル身体の心とアバター身体の心の乖離の話のように見えますが、違う気もします。『みとらじギャラクティカ』ではみとらじモチーフのコミカル電波系で配信者としての月ノ美兎を描き、『部屋とジャングル』は日常回のような月ノ美兎の別の一端を描き出し、『ウエルカムトゥザ現世』ではさらに疾走感のあるカッコいい月ノ美兎像を提示しています。『NOWを』ではいとうせいこうさん作詞のリリックを「そんなガラじゃねぇ」言いながら高らかに歌い上げて終わりです。「さあ行こうてっぺんまで」「アツい仲間チラ見して/手をあげて確かめよう」のリリックは月ノ美兎らしくていいですね。『Moon!! (Avec Acec Moonlight Power Pop Re-Arrange)』は最後にそれは泣くって。

星街すいせい『Still Still Stellar』

ホロライブのVtuberですが、あまり最近のVtuberに詳しくないのでTAKU INOUEさんとのコラボで知りました。Vtuberの曲となるといわゆるキャラソンになりがちな気がしていて、実際『Stellar Stellar』や『NEXT COLOR PLANET』は星街すいせいのキャラソンっぽい雰囲気ですが、そうでもない曲も多数あるので、Vtuberに留まらない歌手の立ち位置を意識しているのだろうかと感じました。

ゲーム

東京クロノス

渋谷に閉じ込められた昔の仲良し8人組が過去を思い出しながら謎を解いていくVRノベルゲームです。ストーリーはともかくとして、どちらかといえばノベルゲームをそのままVRに移植した構成でVRらしい没入感は低めなのと、長めのストーリーを単に読むのはHMDの重さもあってしんどいかなあと思いました。続編のアルトデウスでこの辺りがどうなっているのか気になりますが積みゲーになっています。

ATRI

海面上昇して文明が後退した世界で、コールドスリープされていたアトリというヒューマノイドとの出会いの物語です。お手頃な価格なのに、丁寧なストーリーと魅力的なキャラクター、そしてきれいなグラフィックでかなり満足感があります。ストーリー自体は王道でほぼ1本筋ですが、緩やかに滅ぶことをよしとしない静かな意思が感じられます。あと水菜萌ちゃんかわいい。

これは水を差すような指摘なのですが、AIに関してよく言われる「心の有無」の問題よりも、「心の高度さ」のほうが現実的な問題な気がしています。外界から何らかの影響を受け、逆に判断・行動に影響を与える入出力のあるものとして心を定義し、その高度さを考えるべきなのではないかなと思っています。この定義ではオートマトンチューリングマシンにも"心"があることになりますが、状態数や共感性などから高度さに違いがあると言うことができて、定性的ですが自分にはしっくりきます。チューリングテストで計っているものも心の高度さであるような気がしますし、(倫理的な問題がありますが)人間においてもASDを含めたより広範な問題を説明できそうな気もします。

SUPERHOT VR

迫り来るスタイリッシュな敵の攻撃をどう避けていかに倒すか、という詰将棋のような作品です。元々PCゲームでそのVR移植という形ですが、VRならではの緊迫感ある体験ができて初VRの人におすすめできる作品です。思った以上に身体を使います。時間を進めるとき手を振り回すシュールな絵面になるので、他人のプレイを横で眺めるのも楽しそうです。

YouTube

QuizKnock

東大王で有名な伊沢拓司さんがCEOを務めるQuizKnockのYouTubeチャンネルで、YouTubeでは一番安心して見ています。企画が高頻度なのに結構凝っており、シンプルに回答者の能力を要求する企画から、ルールの攻略が必要な企画やクイズの枠組みを逆手に利用した企画まであり、クイズ自体の問い直しになっていて面白いです。でもそろそろ普通のクイズ企画の割合も増やしてほしい気もします。昔から学びと遊びの融合を掲げていたのですが、今年から学びとゲームをテーマにしたチャンネルがそれぞれでき、さらにそちらの方面を進めていく方針が見えます。単なる机上の勉強だけではない、学問への興味やゲームを介した思考力を扱うコンテンツは地味にブルーオーシャンなのかもしれません。

かまいたちチャンネル

たまたま痛風先生を見て思ってたより山内かわいいなと思ったので、いくつか動画を見てみるとネタのイメージとは逆で、山内がされてきた理不尽なことをちゃんと観察しているからあのネタになってるのだと発見がありました。

バラエティ

相席食堂

ゲストのロケ映像を千鳥の2人が止めつつコメントしていく番組です。「ちょっと待てぃ」ボタン自体がかなりよい発明だと思うのですが、競艇を止めて予想しながら見るのが特にいい使い方だと思いました。

あちこちオードリー

ゲストとオードリーがトークする番組で、心に残る回とただ面白い回の振れ幅がすごいです。特に星野源さんの回が印象に残っています。道に感情が乗り移っていて道を歩くと昔考えていたことが蘇ってくるという話をしていて、他にも掃除でも懐かしいものが出てきて懐かしくなることはよくありますが、ものに感情が宿るというのは不思議な現象ですよね。文字が記憶の外部化になるように、ものは感情の外部化に関係しているのでしょうか。もし感情をそのまま記録できたとすれば、人間から感情をなくすことができるのでしょうか。

M-1グランプリ

今年のM-1はすごく面白かったです。まず決勝では、1番初めのモグライダーが歌ネタで場を和ませていてとても印象的でした。いいえで始まるだけであそこまで話持って行けるものなんですね。オズワルドは静かな狂気と対峙する話かと思ったら、伏線もあるきれいな構成の正統派漫才でこれぞM-1だなと思いました。ロングコートダディはコント型でしたが、”肉うどん”を持ってくるセンスと”天界全体”なる単語とイデア論っぽさが好きで定期的に見返したくなる面白さがあります。敗退のときにネタ合わせしているネタもコントっぽくていいですね。錦鯉は合コンという古めのチョイスが1周回って錦鯉らしいなと思いました。インディアンスは楽天モバイルの下りがツボに入ったのと、あの速度でボケができるの純粋にうらやましいです。

最終決戦ではオズワルドに勝ってほしい気持ちがあったのですが、安定のインディアンス、バカ全開の錦鯉に比べて、オズワルドのメタ性が理解しづらく置いてけぼりになった感覚が強く、やっぱりあの中では錦鯉が1番バカらしくて優勝だなあと思いました。錦鯉、生活崩壊おじさんとVtuber晩酌おじさんのコンビな時点で面白いのずるくないですか?


そんなにコンテンツ消費していない気がしていたのですが、列挙してみると思ったより項目が多くなって書くのに相当時間かかりました。忘れちゃったものもあるので、来年は3ヶ月を目安にまとめるのを目標にしたいです。

来年の抱負としては、本読む時間をちゃんと作りたいです。基本的に在宅でパソコンの前で無為な時間を過ごしがちなので、時間を決めてルーティンにしたいです。また一時期は映画館通いをして洋画邦画問わず見ていたのですが、コロナ禍で行けていなかったので来年は再開したいです。あとは今回書いていて勉強になった部分がたくさんあるので、大小問わずアウトプットの癖を付けたいですね。

*1:LWのサイゼリヤ『21/3/17 シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇の感想 もうどうでもゲリオン』